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教えて!ドクター

札幌いしやま病院 理事長 石山 元太郎 先生

プロフィール

札幌いしやま病院 理事長

日本外科学会専門医・認定医
日本大腸肛門病学会評議員・指導医・専門医
日本消化器外科学会会員
日本内視鏡学会会員
日本臨床外科学会会員

札幌いしやま病院【入院・手術】
〒064-0915
北海道札幌市中央区南15条西10丁目4-1

札幌いしやまクリニック【外来】
〒064-0915
北海道札幌市中央区南15条西11丁目2-1

座りっぱなしや同じ姿勢、深酒にも要注意

座りっぱなしや長時間かがんだり、同じ姿勢をしている人、例えばドライバーや農業をされている方などは、おしりに負担がかかりやすいので、気をつけた方が良いでしょう。もし座りっぱなしの時間が1時間を超えるようなら、一度背中を伸ばしたり、立ち上がったり、屈伸運動をしたりすることをお勧めします。
それから注意した方が良いのは深酒ですね。関連性ははっきりしていませんが、深酒した次の日におしりから出血して来院される方が多くいらっしゃいます。あとはアルコールの代謝産物によって、皮膚炎になったりもします。深酒は肛門にはあまりよくありませんので、痔の症状のある方はできるだけお酒を飲む量を控えてください。

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繰り返しの出血や便の異変は放置せず病院へ

来院の理由としては「出血」が最も多いのですが、一番やってはいけないのが、何度も出血を繰り返しているのに勝手に痔だと思い込んで放置しておくことです。なぜなら、「大腸がん」のリスクもあるからです。中には、出血しているにもかかわらず1年以上も放置している患者さんもいますが、これはよくありません。また、便の形状が以前から比べて変化してきた時も要注意です。便が細くなってきた、柔らかい便しか出ないなどがあれば、これも大腸がんの警告サインです。また大腸がんが原因で便秘になることもありますので、便秘だからと安心せず、おかしいと思ったらすぐに病院に来てください。痔は治りますが、大腸がんは早期に見つけなければ治癒が難しくなります。

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「がんと痔の関係」

女性特有の便秘「直腸ポケット」

便秘は痔の大きな要因になりますが、便秘にもいろんな種類がありますので、それを診断してから治療に入ることが重要です。女性特有の便秘としては、「直腸ポケット」が挙げられます。これは直腸内の便が、直腸壁の前側の腟側にできたポケット状のくぼみに入り込み、肛門から出せなくなった状態です。「便秘」といっても本当にいろいろなタイプがありますので、その原因をしっかり診断してもらった上で、適切な治療を受ける必要があります。

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「女性の皆さまに知っておいていただきたいこと」

初診にかかる時間は、病院に入ってから出るまで1時間程度

当院では、個人情報と羞恥心への配慮から、受付後に番号札をお渡しし、呼び出しは番号で行うようにしています。初診では、診察室で問診を行った後、下半身のみ衣類を下げていただき、横向きの体勢で診察をします。診察が始まるまではタオルをかけてお待ちいただきます。治療の際、出血を気にされる方もおられますが、肛門が狭かったり、裂肛(きれ痔)がある場合などは多少出血することはありますが、基本的には診察が原因で出血することはありません。診察後は病状や薬の使い方などの説明を行います。初診にかかる時間は、その日の混み具合にもよりますが、病院に来てから診察を終え、病院を出るまでで約1時間。費用は診察料として2000〜3000円、お薬代として2000〜3000円程度です。

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「初診の流れと費用」

切り取るのではなく、元に戻す手術「ACL法」

痔核(いぼ痔)の手術に関しては、根治性の高さから結紮(けっさつ)切除手術がスタンダードな術式ですが、術後の出血や痛み、肛門狭窄(きょうさく)のリスクがあります。当院で実施しているのは、「ACL法」という手術です。痔核は、解剖学的には肛門の便漏れを防ぐ役割をしているゴム栓のような組織(肛門クッション)がずれ落ち、肥大することでできると言われています。要するに本来必要なものですから、切り取るのではなく「もとの状態に戻す」、これが「ACL法」の考え方です。肛門機能にほとんど異常が出ず、痛みが相当軽減されます。また切り取らないため見た目もほぼ元通りになります。「ACL法」は、2014年に出版された肛門疾患診療ガイドラインにも記載されており、ここ数年でメジャーな治療になりつつあります。ただ、「ACL法」は元に戻すだけなので、切り取る手術よりも再発しやすい面もあります。ですから、術後は生活習慣に徹底的に気をつけていただく必要があります。このための生活指導も行っております。

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「いぼ痔の治療について」

食事や生活習慣の改善を含む保存療法が基本

裂肛(きれ痔)は、基本的には便性状が悪い(便が硬すぎる・軟らかすぎる)ことが大きな原因です。また、肛門の洗いすぎやこすりすぎにより肛門周囲の皮膚が弱くなっていることもあります。ですから、食事や薬による便性状の改善と、正しい排便、正しい肛門洗浄の指導など、保存療法が基本となります。ただし、裂肛を長年繰り返している場合、それが原因で肛門が狭くなってしまうことがあります。この場合は手術が必要になります。手術は、肛門に指を挿入して狭くなった肛門を広げる肛門用手拡張と、よりひどい肛門狭窄(きょうさく)に対して行う肛門拡張手術があります。肛門用手拡張は日帰りで簡単に行うことができますが、肛門拡張手術の場合は入院が必要になります。

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「仙骨硬膜外麻酔」で麻酔自体の痛みも軽減

痔ろうは、保存療法ではほとんど治癒しないため、完治させるためには手術が必要になります。痔ろうのタイプによって手術の方法は大きく異なり、日帰り治療では治せないケースも多くあります。また、痔ろうの治療においては、麻酔も負担の一つになります。膿瘍がある場合は、切開する前に一般的には患部に局所麻酔を打つのですが、この麻酔自体が大変な痛みを伴うのです。ただ、当院で使用している「仙骨硬膜外麻酔(せんこつこうまくがいますい)」は、その痛みが無いので患者さんの負担もかなり軽減されていると思います。「仙骨硬膜外麻酔」は、おしりの周囲にだけ麻酔をかけられ、2時間程度で切れるので、当院では日帰り手術をはじめさまざまな手術に使用しています。

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女性医師が3名在籍。女性専門外来の時間も設けています

当院には、女性の医師も3名在籍しており、女性外来も行っています。恥ずかしいということもあり、女性は女性に診てもらいたいという心理があるようですので、火曜日の午後を女性専門外来として、男性は待合室にも入れないようにしています。手術については、当院では患者さんの65%が「ACL法」で、残り35%が「ALTA注射」をメインとした治療を行っていますが、女性、特に若い方は肛門の形なども気になると思いますので、元に近い状態にする「ACL法」をお勧めしています。特に肛門の周りがひょっとこの口のように出てしまっている方は、肛門を全部切るわけにはいきませんので、結紮(けっさつ)切除では治せません。こうした場合も「ACL法」が有効です。

※ALTA療法・・・注射により痔核を固めて小さくする内痔核硬化療法

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さまざまな便秘の種類に合わせて、治療することが大切

便秘は痔になる大きな要因の一つです。便秘の治療としては、一つは食生活や生活習慣の改善、もう一つは投薬治療があります。投薬治療は便性状を整えるために行いますが、当院では大腸刺激性下剤は使いません。こちらは長く使い続けると大腸の神経細胞を破壊し、機能を低下させてしまうことがあり、結果として便秘がどんどん悪化します。また、便秘の原因には、大腸がんや内科的疾患、薬などが関係しているケースや、「過敏性腸症候群」という自律神経のバランスが悪くて起こるもの、あるいは「直腸性便秘」といって、直腸まで便は来ているのに出ないという便秘もあります。便秘にもさまざまな種類がありますので、それを診断してから治療に入ることが重要です。

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温水洗浄便座は、使いすぎに注意

温水洗浄便座の使いすぎにも注意が必要です。痔核(いぼ痔)や痔ろうにはあまり関係ないと思いますが、裂肛(きれ痔)には良くない影響があるでしょう。水圧自体刺激になるので肛門には良くないですし、やたらにきれいに洗いすぎると、おしりの常在菌がいなくなってしまいます。そうなると、肛門の免疫力が低下し、肛門カンジダ症などの病気になる場合もあります。また、使いすぎると裂肛になる可能性も高まりますので、温水を数秒あててみて、便がつかなくなったらやめるという使い方が望ましいでしょう。お風呂などでも、固形石鹸や消毒薬で洗いすぎると、おしりがただれ、かゆみが出たり、脆弱性裂肛(ぜいじゃくせいれっこう・皮膚が弱くなることで起こるきれ痔)になることもありますので注意してください。

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食物繊維で便の量を増やし、腸の働きを活発に

一般的に言われていますが、水分の摂取は大事です。便の80〜90%は水分ですから、水分が少ないとすぐに便が硬くなり、出づらくなります。あと必要なのは食物繊維。食物繊維はほとんど消化されずにそのまま出るので、便の量を増やし、腸の働きを活発にしてくれます。特にダイエットなどで食事量の減った方には有効です。また、善玉菌の食料になりますので、腸内環境にも良いと思います。また、便の滑りを良くするためには、油分も大切です。動物性脂肪は、悪玉菌を増やすため便秘になる傾向が高まります。油分は、できれば青魚やオリーブオイルなどで摂取するのが望ましいですね。

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「おしりに優しい食材や調理法」

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