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教えて!ドクター

順心会大澤病院 白野 純子 先生

プロフィール

順心会大澤病院

順心会大澤病院勤務
日本大腸肛門病学会専門医
日本大腸肛門病学会指導医
医学博士

大澤病院
〒655-0874
兵庫県神戸市垂水区美山台3丁目18-12

やっぱり良くない、食べすぎ飲みすぎ

下痢は便の水分量増加により、その性状が無形軟便、泥状便、水様便になることを指します。急性下痢の原因としては、まず食べすぎ飲みすぎ、次に食中毒等の感染性腸炎があります。特に男性ではビールやチューハイ、ハイボールなど、冷たい炭酸系アルコールの飲みすぎが原因の方がおられます。
一方、慢性下痢の原因の一つとして、過敏性腸症候群があります。器質的な病気ではなく、主に極度の緊張やストレスなどが原因で起きるものです。その他には、牛乳などを飲むとお腹がゴロゴロしたり、下痢を起こしてしまう乳糖不耐症や、小麦などに含まれるタンパク質グルテンに小腸が過敏に反応するグルテン過敏症なども慢性下痢の原因として挙げられます。

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腸内細菌の質が重要。便秘を下痢と間違うケースも

若い頃から下痢をしやすい、いわゆるお腹の弱い人も多いのですが、これはその人の持つ腸内細菌の問題だと思われます。胎児の腸内は無菌です。腸内細菌は、出生後、口から入ります。いろいろな説はありますが、早くて9ヵ月、遅くても3歳ぐらいまでにはその人の腸に住みつく常在菌が決まると言われています。若い頃から、便秘や下痢になる人は、この常在菌のバランスが良くないことが考えられます。便通を良くするには、腸内細菌の餌となる食物繊維の摂取も必要ですが、ちゃんとバランスのとれた常在菌を持っていない状態で、餌だけ入れても腸の働きは改善されません。
また高齢者の場合、便秘と下痢を間違えてしまっているケースがあります。高齢になると便秘の方の割合が増えますが、腸内のビフィズス菌の減少がその原因の一つと考えられています。便秘の際、出口で固まった便の周囲から軟らかい便が漏れ、それを下痢と勘違いしてしまうのです。便秘なのに下痢止め薬を使ってしまうと、状態をより悪化させてしまいますので、注意しましょう。

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ベースとなる菌を普段からしっかり摂取する

まず、冷たいものをがぶがぶ飲まないことが大切です。また、腸内に良い菌が少なければ、いくら食物繊維をとっても効果が期待できません。普段から、腸内環境を整えておくことも大切です。予防としては、プロバイオティクスが有効と考えています。プロバイオティクスとは、腸内フローラ(腸内細菌叢)のバランスを改善する微生物のことで、乳酸菌やビフィズス菌が有名です。乳酸菌は、ヨーグルト等、発酵食品に多く含まれています。ビフィズス菌を含むヨーグルトもありますが、ヨーグルトは処方薬やサプリメントに比べて含まれる菌の量が少ないため、1日に300グラム摂取した方がよいといわれています。特に高齢者の方など、量を食べるのが大変な方もいらっしゃいますので、私は処方薬をお勧めしています。過敏性腸症候群の方も、プロバイオティクスの服用で調子が良くなったりしていますので、ベースとしてプロバイオティクスをしっかり摂取しておくことが下痢の予防になるでしょう。

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急性の激しい下痢や、長期間続く下痢は受診を

血がまじっている激しい下痢や、吐き気、嘔吐、腹痛、などは食中毒等の感染性腸炎の可能性が高いので、すぐに受診したほうが良いでしょう。下痢が続きだるさがあれば脱水状態と考えられますので、医師の診察を受けてください。下痢が長期間続く場合、原因はさまざまですが、腸の粘膜にできた小さな穴から、未消化の栄養素などが血液中に入ってしまう危険性もあります。

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「まだ出そう」と思っても、一旦トイレから立ち去ることが痔の予防に

便秘と同様、下痢はトイレの滞在時間が長くなり、頻度も高くなるため、いぼ痔になりやすくなります。長時間トイレに座ることで、脱肛することもありますし、肛門の組織に細菌が入り込み炎症を起こし、肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう)を発症して、痔ろうになるケースや、勢いよく出る下痢便で、きれ痔を起こす場合もあります。また、温水洗浄便座による洗いすぎや、おしりの拭きすぎによって、肛門やその周辺が荒れたりもします。肛門周辺に痛みを感じたり、腫れたりする場合は、上記の可能性が考えられますので、こうした症状がある場合は、肛門科の受診をお勧めします。肛門科では、下痢や便秘、便失禁などについても診察してもらえます。
ただ下痢になったからといって、必ず痔を発症するわけではありません。トイレの滞在時間の長さや、頻度の高さが痔を引き起こす原因ですので、できるだけトイレの滞在時間を短くしましょう。まだ便が出そうだからといつまでも座らず、その時に出る分だけを出して、一度トイレから立ち去るようにしてください。快適な肛門を保つには、まずは腸内環境を整えるのが大切と、毎日患者さんにお話ししています。

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