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教えて!ドクター

松田病院 院長 松田 聡 先生

プロフィール

松田病院 院長

松田病院勤務
日本外科学会専門医
日本大腸肛門病学会専門医
東海肛門疾患懇談会世話人
肛門疾患診療ガイドライン作製委員

松田病院
〒432-8061
静岡県浜松市西区入野町753

軽快、悪化を繰り返しながら、全体的に悪化する

代表的な症状は出血、脱出、痛みです。それから、便が上手く出せない排便困難です。これは痛みと関連がありますが、特に裂肛(きれ痔)の人は痛くて出せません。きれ痔を繰り返すことで肛門狭窄(きょうさく)といって肛門が次第に狭くなっていくことが多く、排便の度に悪化し、最終的には手術にいたる場合もあります。それから、おしりの違和感を訴える方も多くいらっしゃいます。「便をした後に、じんじんする」とか「腫れている気がする」という症状です。これはおしりが一時的に損傷を受けており、痔疾患の悪化の前兆と考えられます。これらの症状は一旦は良くなりますが、軽快、悪化を繰り返しながら全体的に悪化していくことが多いです。おかしいと思ったら、早めに病院に行くことが大切です。

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出血や痛みは、痔以外の病気の可能性も

出血、痛みは絶対に一度病院に行った方が良い症状です。おしりが痛くて出血しているからといって痔とは限りません。肛門痛も直腸がんが原因のケースがありますので注意が必要です。われわれ医師も、いつもがんの存在を気にしながら肛門の診察をしています。
また、指を入れた時に鮮血でなく暗赤色の血が付く方が結構います。大腸がん以外にも、腸炎、クローン病、潰瘍(かいよう)性大腸炎などさまざまな病気がありますので、このような場合は、すぐに浣腸だけして短い大腸カメラを入れて観察しています。多くは虚血性腸炎や憩室(けいしつ)出血が原因ですね。これらはよく、痔による出血と間違えられます。このようにさまざまな可能性が考えられますので、出血の場合は一度で良いので必ず受診するようにしてください。

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早期発見の大腸がんは、カメラでの切除が可能

出血、痛みはすぐ受診した方が良い症状です。当院で、痔の手術をする前の患者さんに大腸カメラを施行すると約13%の人にポリープが見つかっていました。1割以上です。また、がんは0.4%の人に見つかり、 1000人に4人にがんが見つかるという確率になります。こうした統計を見ていると、痔だと思い込まずに受診いただいた方が良いと感じます。早期の大腸がんは内視鏡で切除できますが、放置すると進行がんになってしまい開腹手術をしなければならなくなることがありますので早期発見が大切です。また、直腸にがんがある方は、指を入れるとすぐにわかりますので、指を入れての検査(指診)はとても重要です。

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実はゴルフもおしりに悪い

当院の周辺では、農業をされていて、しゃがんで草取りをする方が多くいらっしゃいますが、肛門には良くないんです。しゃがんでの移動は、肛門が引き延ばされ、変な力がかかると私は考えています。また、長時間運転するドライバーの方や、デスクワークをする方、つまり、日常的におしりの血流が悪くなる方も要注意です。また、ゴルフも良くありません。スイングの一瞬でものすごい力がおしりにかかるので、ゴルフの後で腫れる人はたくさんいます。当院で患者さんに渡している指導箋の術後の禁止事項にもゴルフを入れているぐらいです。予防としては、なるべくお風呂に浸かること。きれいにするという意味よりは、血流を良くする意味合いが大きいですね。夏でもなるべく湯船に浸かった方が良いですし、腰を冷やさないようタオルケットを置くなども指導します。

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痔ろうの患者さんは圧倒的に男性多数

痔ろうは、直腸と肛門の間にある小さな穴に細菌が入ることが原因ですが、圧倒的に男性の患者さんが多いです。理由は、男性は肛門の内圧が高いので細菌が穴に入りやすいという説、男性ホルモンが関係しているという説などがあり、確実には分かっていないのですが、事実として男性の患者が多くなっています。
また、「痔ろう」については、体重の重い人の方が多い傾向が指摘されています。糖尿病などで感染を起こしやすい可能性があるために結果的に多くなっているのだと思います。下痢が原因になることが多いので、お酒を飲みすぎた後に肛門が腫れる方も結構いらっしゃいます。もちろん女性の患者さんもおられます。女性は男性に比べて前の方(生殖器側)の痔ろうができやすいことが知られています。

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生理中でも迷わず病院へ

女性の場合、出産後に痔になることが多いのですが、「恥ずかしくて病院に行けない」と言っているうちに、だんだん大きくなってきて来院される方も多いですね。数年から10年単位で、痔核(いぼ痔)や裂肛(きれ痔)を持たれている場合が多いと思います。特に高齢者の女性で「恥ずかしい」という方が多く、当院でも「女性外来」を設け、診察は女性医師が担当していますが、一度診察されると、その後は安心して気にされなくなる方も多いですよ。
生理の時の診察も、気にしていただかなくても大丈夫です。問診の際にも、心配ない旨をお伝えしています。また、女性の患者さんで、月経に伴って便秘になったり、下痢になったりして、その時だけおしりが悪化する方も結構いらっしゃいます。そういう方には、その時だけ薬を使えば良いという指導をし、薬を処方しています。

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お子さんの便秘による「裂肛(きれ痔)」は、排便習慣の定着が第一

一般的な、痔核(いぼ痔)やきれ痔では、ご高齢の方はあまり痛がらないですね。「いぼ痔が出てきて気持ち悪い」「座った時にいぼ痔を踏んでしまう」「血が付く」という悩みが多いです。これは肛門の内圧と関係していると言われていて、おしりが緩くなることで痛みを感じづらくなると考えられています。
お子さんについては「乳児痔ろう」というのがあります。これは基本的には放っておいても大丈夫。多くは自然に治ります。12歳ぐらいまで残っているお子さんに関しては、体が大きくなったところで手術も考えます。また、便秘による「きれ痔」があるお子さんも多いのですが、小児科で便秘薬をもらったり浣腸をしてもらったりで済ませていることが多いですね。お子さんの便秘の場合は、薬を上手に使って毎日1回自分の力でスムーズに排便する習慣を作ることが一番大切です。

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消化器外科の経験を持つドクターなら治療のビジョンが持てる

病院選びでは、消化器の外科を経験しているドクターのいる病院が良いと思います。外科医はおしりの手術を研修医の時に経験しますので、患者さんの一般的な治療経過を知った上で治療ができます。また、実際には良くなっていても痛みや出血を訴える患者さんに対して、頭ごなしに何でも否定してしまうドクターはよくありません。たとえば、診察して何もないように見える場合も、精密検査すると肛門の奥の方で直腸脱が起こっているケースもあります。私自身、知れば知るほど、患者さんご本人の言うことは正しいことが多いというところにいきつきます。納得できないのであれば、病院を替えてでも診てもらうことも必要ですね。

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「病院の選び方」

まずは投薬と生活習慣の改善で様子を見る

当院での痔核(いぼ痔)の治療は、最初は軟膏や飲み薬を使うことが多いです。食生活や仕事の内容などもからみますので、当院で作成している「肛門病の治療と予防10ヶ条」をお渡しして、生活改善もしていただきます。薬も使って約1ヵ月様子を見て、効果がなければ手術を検討します。当院は結紮(けっさつ)切除術とALTA療法の両方を取り入れています。結紮切除術が7割、ALTA療法が3割ですが、患者さんと相談の上決定します。入院期間としては、ALTA療法は1泊2日で済みますが、結紮切除術は1週間かかります。確実に根治を目指すなら結紮切除術ですが、現役世代の男性は、仕事が休めないということで、ALTA療法を選ぶ方も多いですね。反対に女性の場合は、ゆっくり休んで結紮切除術で根治させたいという方が多いようです。

※ALTA療法・・・注射により痔核を固めて小さくする内痔核硬化療法

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「いぼ痔の治療について」

裂肛(きれ痔)の手術の基本は肛門の拡張です

裂肛(きれ痔)に関しては、切れては治り、を繰り返すうちに肛門が狭くなったり、きれ痔の周りが腫れてきたりします。「裂肛」「外側の皮垂」「内側のポリープ」は3点セットで、それらがさらに症状を悪化させます。初期治療は痔核(いぼ痔)と同様ですが、一つ違うのは、おしりの筋肉の緊張をやわらげる軟膏も使用するところです。それでも軽快しない場合は手術が必要となります。手術は裂肛自体を治すというより、肛門をもとの広さにして戻してあげることで裂肛を改善させるものです。「肛門形成術」と言われますが、適切な広さ以上に拡げすぎると便漏れをおこしますので細心の注意をはらって行います。肛門が狭くなる原因も、筋肉自体が硬くなり便の通り道が狭い方、周囲の皮が硬くなって狭くなっている方などさまざまです。医師としては、それをしっかり見極め、患者さんに合う治療を見つけることが重要になります。

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一般的な手術に加え、筋肉を全く切らない手術方法も登場

痔ろうに関しては、ほとんど手術しか手はないのですが、今までの痔ろうの手術は、肛門内から肛門外の皮膚に貫通する膿が通るトンネルをくり抜くのが主流でした。くりぬいてできた穴に輪ゴムを通し、その輪ゴムを徐々に小さくしていく方法で、ゆっくり4〜5ヵ月かけて筋肉を切りながら修復されていき治っていくというイメージです。これに対し、近年各専門病院が始めているのが、筋肉を全く切らない「括約筋温存術」です。当院で施行している「LIFT手術」は、膿の管を糸で縛って膿の交通を遮断し、外側の筋肉と関係ないところだけをくり抜くもの。外側のくり抜いた部分には、遮断しているため細菌が入れず、枯れてなくなるというものです。

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診察と検査は女性の医療従事者、診察以外は男性と同じように接する

当院も女性外来があります。完全な女性外来であれば、入りロや受付も別、診察も女性の医師、検査も女性の技師といったように、男性に全く会わないのが理想だと思いますが、当院で患者さんにアンケートをとってみると、「診察と検査は女性が良い」という方が多いことがわかりました。当院の患者さんは、肛門疾患だけではありませんから、他の病気に紛れられるということもあるかもしれません。そこで、当院の女性外来では、診察と検査を女性にして対応しています。余談ですが、初回は女性外来を希望される方が多いのですが、2回目以降は誰でも良いので早く診てもらいたいという意見が多かったですね。一度受診すれば度胸がつくのかもしれません。

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万一再発した場合は、前回より悪くなる可能性があるので早めの来院を

再来院の基準ですが、基本的には同じような症状が出たら再来院していただきたいですね。一度良くなった後で、また症状が出てくる方は、だいたい前回の時よりもひどくなっています。一度経験しているので、どんな症状が出ると危ないかは把握されていると思います。ひどくなるとより治療が困難になりますので、早期治療を心掛けてください。

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夜中に激痛が走る「機能性直腸肛門痛」

おしりの病気の中には、「機能性直腸肛門痛」というものもあります。これは夜間に激痛に襲われることが多いのですが、毎日あるわけではなく、人によって週に1回、月に1回、年に1回という割合で起こります。原因は未だにわかっておらず、専門医のいる病院でなければ診断が難しい。「気のせいだ」と言われることも多いでしょう。ただ、皆さんに共通しているのは、救急車を呼ぼうか考える程のとてつもない痛みが15分ぐらい続くことです。肛門の筋肉の過剰な収縮や陰部神経が関係していると言われていますが、こうした病気自体ほとんど知られていません。私も何人か患者さんを抱えていますが、患者さんの中には、診断の結果をお伝えするだけで安心して症状が和らぐ方もいらっしゃいます。専門医なら、治療はできないまでも、そういうものだとお伝えすることはできますので、困ったらとにかく専門医に相談してください。

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便秘だからと食事を控えるのは逆効果

一般的に言われていることですが、水分摂取は大切です。あと勘違いされているのは、便が出ないから食事を減らすという行為です。これは明らかに逆効果です。排便には、きちんと食べて便のかさを増し、直腸に溜まることで圧力のセンサーに引っかかり、便を出すメカニズムがあります。食べ物を減らせば水分も滅り、同時に圧力のセンサーに引っかかるほど便が溜まらなくなります。必要以上に食べる必要はありませんが、1日3食しっかり食べた方が良いですね。また薬としては、緩下剤は良いですが刺激性下剤はこの排便メカニズムを損ねるため、使わない方がよいでしょう。「3日出てないから出さなきゃ」と無理に下剤で出すのではなく、お腹の張りや吐き気などが無ければ、待つことも大切です。3日出なくても、4日目に出ればOK。それぐらいの余裕を持ってください。

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意外と知られていない、ニンニク、柿は要注意

繊維摂取は大切ですが、偏ってはいけません。食物繊維には水溶性繊維と不溶性繊維とありますが、便秘に良いからと菜っ葉系ばかり食べていると、逆に便が出づらくなることもあります。また、生野菜だけでは本当に必要な繊維はとれませんので加熱調理した野菜を食べることをお勧めします。また、治療後に良くない食材としては、わさびや唐辛子などの刺激物が挙げられますが、意外と知られていないのはニンニク。これも刺激物なので、餃子などは注意してください。あと、果物では柿も良くありません。柿に入っているタンニンは、下痢止めの成分ですので、便秘になりやすいのです。反対に、牛乳やヨーグルトも人によっては良くありません。便が硬い人には有効ですが、食べて下痢を起こすような人は、極力控えてください。

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「おしりに優しい食材や調理法」

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